2025年

《みんけん館掲示板》

◎1月の行事
1月 2日(木):鍬入れ(民権林園)
1月 4日(土):仕事始め
1月11日(土):板倉秀峰忌
1月24日(金):幸徳秋水忌

◎みんけん林園 Self Sown Seed System, Experimental Farm
△収穫:里芋
△植付:馬鈴薯
△野鳥:マガモ、コガモ、ダイサギ、アオジ、メジロ

◎異常気象・災害・感染症
▼青森県弘前市で記録的大雪、最大積雪114cm。
▼銚子市で鳥インフルエンザ殺処分41万羽。全国で700万羽超。
▼ロサンゼルスで強風による広域火災、1万棟超の家屋焼失、延焼。

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□書籍『最新・秩父事件-生きる自由を求めて』(秩父事件研究顕彰協議会編2024年10月31日)
□会報『秩父№223』(秩父事件研究顕彰協議会2024年11月)※門平惣平の墓碑記述。
□通信(デジタル版)『全国みんけん連ニュース№11』(全国自由民権研究顕彰連絡協議会2024年12月1日)
□新書『早稲田大学の学祖 小野梓』(早稲田大学出版部2024年12月2日)※小野梓(おの・あずさ)の房総遊説記述。
□チラシ「企画展 わたしのまちの自由民権」(高知市立自由民権記念館2025年1月25日~6月1日)※子供は無料。



収蔵資料解説「漢詩と民権運動」

謹賀新年 今年も「漢詩と民権運動」(杜甫・兆民・秋水)のテーマを書き続けます。正月は引き続き、中江兆民が酒席で吟詠したという七言律詩「蜀相(しょくしょう)」を鑑賞しましょう。

上掲の原著『兆民先生』(「第六章人物」)に、「蜀相」の第七句・第八句(尾聯)が引用されています。しかしながら引用された詩句には誤植又は誤認が有ります(「涙沾襟」)。この誤りが120年間も訂正されることなく放置されて来ました。

杜甫研究者の編著から正しい詩句(「涙滿襟」)を引用しましょう。

杜甫作「蜀相」 ※蜀相は「三国志」の軍師、諸葛孔明

    一二三四五六七
第一句 丞相祠堂何處尋
    ○◎○○○●韻
第二句 錦官城外柏森森
    ●○○●●○韻
第三句 映堦碧草自春色
    ●○●●●○●
第四句 隔葉黄鸝空好音
    ●●○○◎●韻
第五句 三顧頻繁天下計
    ◎●○○○●●
第六句 兩朝開濟老臣心
    ●○○●●○韻
第七句 出師未捷身先死
    ●○●●○◎●
第八句 長使英雄涙
滿襟  ※沾→滿
    ●●○○●●韻
(鈴木虎雄譯解『杜少陵詩集第二巻』国民文庫刊行会1928年、鈴木虎雄・黒川洋一訳注『杜詩第四冊』岩波文庫1965年、森槐南著『杜詩講義1』平凡社東洋文庫1993年、下貞雅弘・松原朗編『杜甫全詩訳注(二)』講談社学術文庫2016年等)

※760年成都での作、杜甫49歳(上掲『杜甫全詩訳注(四)』年表)。記号の〇は平声、●は仄声、◎は平仄両用。第一句の二字目「相」が両用であるが、第八句の二字目「使」が仄声なので「仄起」の七言律詩。韻は下平(かひょう)十二侵(尋・森・音・心・襟)。「二四不同(にしふどう)」、「二六対(にろくつい)」、「下三連(しもさんれん)不可」、「四字目弧平(よじめこひょう)不可」の基本原則が順守されている。「蜀相」の平仄については、森泰二郎(槐南)『作詩法講話』(文會堂書店1911年)の「第一章平仄の原理」に詳述されているので参照されたい。
※中国の清朝時代に刊行された『杜工部集』、『杜詩詳註』、『唐宋詩醇』の「蜀相」は「涙
滿襟」という詩句であった。江戸時代に日本で刊行された『杜詩偶評』の「蜀相」も同様で、「涙襟(なみだにえりをうるおす)」というような詩句は見当たらない。今までの幸徳秋水著『兆民先生』(原著・岩波文庫旧編・幸徳秋水全集第八巻・近代日本思想大系13幸徳秋水集、岩波文庫新編等)に引用された「涙襟」は、誤植又は誤認又は誤記と結論付けることができると思う。

訓読
 丞相(じょうしょう)の祠堂(しどう)何(いず)れの処(ところ)にか尋(たず)ねん
 錦官(きんかん)城外(じょうがい)柏(はく)森々(しんしん)たり
 階(きざはし)を映(おお)う碧草(へきそう)は自(おのずか)ら春色(しゅんしょく)
 葉(は)を隔(へだ)てる黄鸝(こうり)は空(むな)しく好音(こういん)
 三顧(さんこ)頻繁(ひんぱん)なり天下(てんか)の計(けい)
 両朝(りょうちょう)開済(かいせい)す老臣(ろうしん)の心(こころ)
 師(し)を出(い)だして未(いま)だ捷(か)たざるに身(み)は先(ま)ず死(し)し
 長(とこし)えに英雄(えいゆう)をして涙(なみだ)襟(きん)に(み)たしむ
(上掲『杜甫全詩訳注(二)』講談社学術文庫2016年参照)

※第一句の「丞相」は諸葛亮(孔明)、第二句の「錦官城」は成都(せいと)の西部。第四句の「黄鸝」はウグイス。第五句の「三顧」は劉備玄徳の三顧の礼、第六句の「両朝」は蜀の劉備・劉禅の父子二代で、「開済」は諸葛亮が蜀の創業を援け国難を救ったこと。第八句の「英雄」は後世の英雄達を指す。
※七言律詩なので第三句と第四句(頷聯)は対句(ついく)。文法(映階・隔葉)、色彩(碧・黄)、四季(春色・好音)が対応している。第五句と第六句(頸聯)も対句である。数量(三・両)、治世(天下・老臣)、軍略(計・心)が対応している。



《みんけん館掲示板》

◎2月の行事
2月 1日(土):ズーム研究会(千葉県内自治体史)
2月14日(金):服部耕雨忌(千葉県旭市の民権家俳人)
2月18日(火):館長通院(鴨川市内総合病院)

◎みんけん林園 Self Sown Seed System, Experimental Farm
△収穫:柚子、菜花、小松菜、蕗の薹
△植付:馬鈴薯
△野鳥:マガモ、コガモ、ダイサギ、アオジ、メジロ

◎異常気象・災害・感染症
▼銚子半島周辺で鳥インフルエンザ殺処分250万羽、全国で700万羽超殺処分、感染拡大。
▼青森県で大雪、酸ヶ湯で積雪500cm超。

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□冊子『金目からオレゴンへ~世界へと羽ばたいた民権派青年、猪俣弥八とその生涯』(猪俣弥八研究会編2024年11月15日)※猪俣は神奈川県平塚市金目(かなめ)出身。
□会誌『千葉史学第85号』(千葉歴史学会2024年11月30日)
□通信『NPОフォーラム・だより№114』(安房文化遺産フォーラム2025年1月1日)
□チラシ「企画展 わたしのまちの自由民権」(高知市立自由民権記念館2025年1月25日~6月1日)※子供は無料。
□会報『秩父№224』(秩父事件研究顕彰協議会2025年1月)※坂本宗作墓碑の写真と解説。
□文具「民権家桜井静(さくらい・しずか)ゆかりの硯箱」(関係者御子孫の寄贈2025年2月)。※吉川静(新郎)と桜井千可子(新婦)が結婚した時の引き出物、保証書付き。



収蔵資料解説「漢詩と民権運動」

1月は、友人、知人、リピーター各位から懇篤なる年賀状を頂戴いたしました。差支えの無い範囲で賀詞を抜粋して紹介させて頂きますので、御高覧賜れば幸甚です。順不同、※は館長の注記です。

〇体調はいかがですか。「出獄詩」は声を出して読んだらどうなるのでしょうか。
(千葉県、女性) ※「出獄詩」は成島柳北の七言絶句。
〇こちらも老人世帯、出来る範囲でそれなりに頑張っています。不安を抱えつつ。
(東京都、女性)
〇初孫が誕生し、にぎやかなお正月を過ごしています。
(千葉県、女性)
〇「自由民権150年」も始まっていますが、日本の「民主主義」の歴史をどう叙述するのか考えております。
(兵庫県、女性)
〇ウクライナ、ガザに平和を。メガソーラー建設計画を何とか止(と)めたいとガンバってます。
(千葉県、女性)
〇先生が杜甫、良いですね。俳句は底知れず深くて、私は新古今を1年かかって独習しました。
(千葉県、女性)
〇日本の食料自給率は10%前後。農業こそ命を守り環境を守り地域と国土を守る公共事業、危機を自覚し「市民皆農」のあり方を模索したい。
(千葉県、男性)
〇皆々様にとって良い年であることをお祈りいたします。来年から賀状、失礼させて頂きます。
(長野県、男性)※90歳代の男性。
〇歴史の勉強で課題がたくさんあって、一日々々少しずつやっております。
(福島県、男性)
〇80年前、敗戦。戦争ばかりしてきた近代日本。裸電球を覆っていた風呂敷が取れるとパッと明るく!4歳の平和体験。
(埼玉県、男性)
〇「闇バイト」に走る若者を見ると、上の世代として何とかできないのかという気持になります。
(東京都、男性)
〇私は今年も家事見習いです。案外忙しいですね。
(千葉県、男性)
〇気候変動ただならぬ中ですが、ご健康のほど、祈りあげます。
(東京都、男性)
〇大学での授業実践を報告しました。現役でいる限り実践報告を続けようと思っています。
(千葉県、男性)
〇鴨川を舞台とした漫画を二作ご紹介します。「しーちゃん」、「大海に響くコール」、是非ご一読下さい。
(千葉県、男性) ※「鴨川」は千葉県鴨川市。
〇お元気ですか。40年勤めた新聞社を退職致しました。「また元の子どもに戻るお正月」。
(神奈川県、男性)

(以下続く)




《みんけん館掲示板》

◎3月の行事
3月 2日(日):予約客様来館
3月11日(火):館長通院(眼科)
3月20日(木):春分の日(墓参)

◎みんけん林園 Self Sown Seed System, Experimental Farm
△収穫:菜花、小松菜、甘夏
△植付:空豆(開花)、馬鈴薯(発芽)、里芋(植替え)
△野鳥:メジロ、ウグイス

◎異常気象・災害・感染症
▼大船渡市で広域山林火災
▼岡山県、愛媛県で広域山林火災

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□文具「民権家桜井静(さくらい・しずか)ゆかりの硯箱」(関係者御子孫の寄贈2025年2月)。※吉川静(新郎)と桜井千可子(新婦)が結婚した時の引き出物、保証書付き。
□会報『秩父№225』(秩父事件研究顕彰協議会2025年3月)※「大野国蔵の墓碑」の写真と解説。



収蔵資料解説「漢詩と民権運動」

上掲『兆民先生』には、貧窮に喘(あえ)いだ杜甫の生涯と中江兆民の人生を比較した章が有ります(「第四章議員と商人」、「第六章人物」)。

3月からは、幸徳秋水が取り上げた杜甫の貧窮詩の代表作「七歌」を、7回連続で鑑賞しましょう。上掲『兆民先生』第四章には、「文人詩家、唯(た)だ杜甫のみ真に困窮せり、彼(かの)七歌(しちか)の如き」と記述されています。

乾元中(けんげんちゅう)、同谷県(どうこくけん)に寓居(ぐうきょ)して作れる歌(うた)七首(しちしゅ)、759年作。【作品番号0364】
※詩型が非定型の古詩なので原詩と平仄は省略。

書き下し文
客(かく)有り客(かく)有り字(あざな)は子美(しび)
白頭(はくとう)の乱髪垂(た)れて耳を過ぐ
歳ゞ(としどし)橡栗(しょうりつ)を拾いて狙公(そこう)に随う
天は寒く日は暮(く)る山谷(さんこく)の裏(うち)
中原(ちゅうげん)書(しょ)無く帰ること得ず
手脚(しゅきゃく)は凍皴(とうしゅん)し皮肉は死す
嗚呼(ああ)一歌(いつか)す歌(うた)已に哀し
悲風我が為(ため)に天より来たる
(『杜詩第三冊』岩波文庫1965年、『杜甫全詩訳注二』講談社学術文庫2016年参照)
※「子美」は杜甫自身のこと、「狙公」は猿を飼う人、「中原」は故郷の洛陽一帯を指す。

現代語訳
旅人よ、旅人よ、その字(あざな)は子美(しび)という。
白髪(しらが)頭から乱れた髪が耳の下まで垂(た)れ下がっている。
食料のドングリを拾うために、いつも猿を飼う人について回る。
気候は寒さを増し、山中(さんちゅう)の谷間では日も暮れた。
故郷の中原(ちゅうげん)から一通の便りも届かないので、帰ることができない。
手足はあかぎれだらけで皮膚も体も感覚が無い。
ああ、一たび歌い起こせば歌はすでに悲しみを帯びている。
風が私の悲しみを募(つの)らせるかのように天から吹いて来る。
(上掲『杜詩第三冊』、『杜甫全詩訳注二』参照)

杜甫は770年に59歳で客死(病死)するまで、家族と共に貧乏な旅行を続け、1400余の漢詩を残しました。生涯の最後尾は「鶉衣(じゅんい)寸寸(すんすん)に針(はり)あり」(破れた衣服は針と糸で何度も繕っている)と筆記しています【作品番号1457】。(『杜甫全詩訳注四』講談社学術文庫2016年)

(以下続く)



《みんけん館掲示板》

◎4月の行事
4月 4日(金):清明節
4月 9日(水):館長通院(内科)
4月20日(日):穀雨、民権林園タケノコ掘り
4月23日(水):オンライン講習会
4月27日(日):地域行事

◎みんけん林園 Self Sown Seed System, Experimental Farm
☘野菜:タケノコ(収穫)、セリ(収穫)、ミツバ(収穫)、フキ(収穫)、空豆(結実)、馬鈴薯(開花)、里芋(発芽)、ブロッコリー(植替)。
❤果樹:富有柿(新葉)、甘夏(新芽)、柚子(新芽)、梅(結実)、プラム(結実)、柘榴(新葉)。
♦鳥獣:メジロ、ウグイス、アオサギ、ダイサギ、ヒヨドリ、キジ。キョン(捕獲)。

◎異常気象・災害・感染症
▼ミャンマーで大地震、死者3000人超。

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□冊子『評論№232』(日本経済評論社2025年1月31日)
□会報『福島自由民権大学 35号』(福島自由民権大学事務局2025年3月30日)
□通信『自由のともしびVOL98』(高知市立自由民権記念館2025年3月31日)
□「桜井(吉川)静ゆかりの仏具」(関係者御子孫から寄贈2025年3月)
□会報『秩父№225』(秩父事件研究顕彰協議会2025年3月)※「大野国蔵の墓碑」の写真と解説。



収蔵資料解説「漢詩と民権運動」

芭蕉の晩年の名句は「旅に病んで夢は枯野をかけ廻(めぐ)る」です。3月は杜甫の絶筆となった漢詩(五言排律)の一部分を紹介しました。4月は貧窮の旅人であった杜甫の名句を鑑賞しましょう。

杜甫晩年(50代後半)の詩を網羅(もうら)した『杜甫全詩訳注(四)』(講談社学術文庫2016年)から、漂泊(ひょうはく)に関する詩句を紹介します。

「縁情慰漂蕩」
 「抱疾屡遷移」
(偶題【作品番号1028】766年秋、55歳)

書き下し文
情(じょう)に縁(よ)りて漂蕩(ひょうとう)を慰(なぐさ)め
疾(やま)いを抱(いだ)きて屡々(しばしば)遷移(せんい)す
(『杜詩第七冊』岩波文庫1966年、『杜甫全詩訳注(四)』講談社学術文庫2016年参照)

現代語訳
私は感情の赴(おもむ)くままに詩を作って漂泊の暮らしを慰(なぐさ)め、
病(やまい)を抱(かか)えたまま各地を転々としている。
(上掲文庫参照)

「偶題」の詩型は杜甫の絶筆(辞世)と同じ「五言排律」(律詩を引き伸ばした形式)です。他界する4年前の766年、杜甫が55歳の時の作品です。漢詩の歴史と自身の流転の境涯を、韻字と対句の技法を駆使して表現しています。

「嚢虚把釵釧」
 「米盡拆花鈿」
(秋日夔府詠懐【作品番号1155】767年秋、56歳)

書き下し文
嚢(のう)虚(むな)しくして釵釧(きせん)を把(と)り
米(こめ)尽(つ)きて花鈿(かでん)を拆(さ)く
(『杜詩第七冊』岩波文庫1966年、『杜甫全詩訳注(四)』講談社学術文庫2016年参照)

現代語訳
財布が空(から)になると妻の釵(かんざし)や腕輪(うでわ)を銭(ぜに)に代え、
米(こめ)が無くなると螺鈿(らでん)を引き裂(さ)いて食糧に代える。
(上掲文庫参照)

「秋日(しゅうじつ)夔府(きふ)詠懐(えいかい)」の詩型は上述の「偶題」と同じ「五言排律」(律詩を引き伸ばした形式)です。五言200句からなり、韻字は下平一先(邊~銓)で100韻に及びます。杜甫の最長の漢詩です。767年56歳の時の円熟した作品です。場所は夔(き)州(現在の重慶市)でした。

「此身飄泊苦西東」
 「右臂偏枯半耳聾」
(清明其二【作品番号1383】769年春、58歳)

書き下し文
此(こ)の身(み)は飄泊(ひょうはく)して西東(せいとう)に苦しみ
右臂(うひ)は偏枯(へんこ)し半耳(はんじ)は聾(ろう)なり
(『杜詩第8冊』岩波文庫1966年、『杜甫全詩訳注(四)』講談社学術文庫2016年参照)

現代語訳
私は漂泊して行方(ゆくえ)の定まらない旅に苦しむ。
右手(みぎて)は自由がきかず片耳(かたみみ)は聞こえない。
(上掲文庫参照)

「清明」の詩型も七言排律、韻字は上平一東(東・聾・空・同・楓・中・翁)です。「清明節」は4月上旬の節気です。769年58歳の時の作品です。同詩には右手が利(き)かなくなったので左手で空中に文字を書くというような凄絶な詩句もあります。

768年作の五言律詩「岳陽楼(がくようろう)に登る」【作品番号1363】には、「老病(ろうびょう)弧舟(こしゅう)有(あ)り」(老病の身にたった一つの小舟が有るだけ)の詩句があります。「悲哀」の名詩と言えるでしょう。

(以下続く)



《みんけん館掲示板》

◎5月の行事
5月 3日(土):憲法記念日
         ズーム研究会(県内自治体史)
5月 5日(月):こどもの日
5月 7日(水):薫陶忌(いすみ市の井上幹顕彰)
5月20日(火):三省忌(勝浦市の君塚省三顕彰)
5月21日(水):理事長通院(市内総合病院)

◎みんけん林園 Self Sown Seed System Farm 小規模・多品種・農労学・共存互恵
野菜:ミツバ(収穫)、蕗(収穫)、芹(収穫)、空豆(種豆取)、馬鈴薯(収穫)、里芋(新葉)、ブロッコリー(収穫)、青紫蘇・赤紫蘇(新葉)、生姜(発芽)、パクチー(新葉)、オクラ(種蒔)、茄子(開花)、ミニトマト(開花)。

果樹:富有柿(新葉)、甘夏(開花)、柚子(新葉)、梅(収穫)、プラム(結実)、柘榴(蕾)、栗(新葉)、枇杷(新芽)、金柑(新芽)、パール柑(新葉)。

♠樹木:楠(新葉)、樫(常緑)、榎(新葉)、橡(新葉)、楓(新葉)、檜(常緑)、椿(常緑)、山茶花(常緑)、檜葉(常緑)、岩躑躅(落花)、高野槙(新葉)、南天(常緑)、百日紅(新葉)、辛夷(落花)、金木犀(新葉)、榊(常緑)、朴木(新葉)、柏(新葉)、山桜(落花)、山茱萸(新葉)、チャノキ(新葉)、モチノキ(常緑)、シュロ(常緑)、ソテツ(常緑)。※竹林(孟宗竹・篠竹)

鳥獣:アオサギ、ダイサギ、ヒヨドリ、キジ、ウグイス、ムクドリ、ホトトギス。
    キョン(捕獲)、ハクビシン(捕獲)、タヌキ。

◎異常気象・災害・感染症
▼。

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□仏具「桜井(吉川)静ゆかりの人物御位牌」(関係者御子孫から寄贈2025年3月)
□冊子「読書会レジュメ」(銚子市民団体2025年5月1日)



収蔵資料解説「漢詩と民権運動」

3月と4月は、杜甫の759年作「乾元中(けんげんちゅう)、同谷県(どうこくけん)に寓居(ぐうきょ)して作れる歌(うた)七首(しちしゅ)」の「其(そ)の一」を鑑賞しました。※「同谷県」は現在の甘粛省。

5月は上掲詩の「其の二」(第二歌)を鑑賞しましょう。杜甫に同行した妻子の空腹と貧窮について、次のような詩句が残されています。杜甫48歳の時の作品です。

「男呻女吟四壁静」
 「嗚呼二歌兮歌始放」
【作品番号0364】759年作、七言古詩

書き下し文
男(おとこ)は呻(うめ)き女(おんな)は唸(うな)り四壁(しへき)静(しず)かなり
嗚呼(ああ)二歌(にか)す、歌(うた)始(はじ)めて放(はな)つ
(『杜詩第3冊』岩波文庫1966年、『杜詩講義4』平凡社東洋文庫1993年、『杜甫全詩訳注2』講談社学術文庫2016年参照)

現代語訳
息子と娘は寒さと空腹でうめいているが、部屋の四方(しほう)は壁だけがひっそりとしている。
ああ、ようやく二番目の歌を大きな声で歌い出す。
(上掲文庫参照)


古川末喜(ふるかわ・すえき)氏の『杜甫の詩と生活』(知泉書館2014年)は、杜甫詩の鑑賞を「乾元中寓居同谷県作歌七首」(第1番)から始めたユニークな著作です。同書の締め括りは、杜甫のユートピア詩「蚕穀行(さんこくこう)」(第51番)を鑑賞しています。

「あの偉大な杜甫でさえ、こんなにみすぼらしく哀れなことがあったのだ(中略)自分より何十倍も優れた人が、自分より何十倍もみじめだったというこの逆接が、杜甫詩の大きな吸引力」と指摘しています(同書10頁)。



《みんけん館掲示板》

◎6月の行事
6月 3日(火):梅干し塩漬け作業(2樽)
6月 4日(水):館長通院(眼科)
6月11日(水):理事長通院(整形外科)
6月19日(木):房総自由民権資料館(鉄筋コンクリート)創立記念日※2012年開館
6月21日(土):夏至

◎みんけん林園 Self Sown Seed System Farm 小規模・多品種・農労学・共存互恵
野菜:馬鈴薯(豊作貯蔵)、里芋(緑葉)、ブロッコリー(収穫)、青紫蘇・赤紫蘇(緑葉)、生姜(成育)、パクチー(収穫)、オクラ(種蒔)、茄子(結実)、ミニトマト(結実)、カボチャ(緑葉)。

果樹:富有柿(緑葉)、甘夏(開花)、柚子(緑葉)、梅(塩漬)、プラム(結実)、柘榴(開花)、栗(緑葉)、枇杷(収穫)、金柑(新芽)、パール柑(新葉)。

♠樹木:楠(新葉)、樫(常緑)、榎(新葉)、橡(緑葉)、楓(新葉)、檜(常緑)、椿(常緑)、山茶花(常緑)、檜葉(常緑)、岩躑躅(落花)、高野槙(緑葉)、南天(常緑)、百日紅(緑葉)、辛夷(落花)、金木犀(新葉)、榊(常緑)、朴木(新葉)、柏(緑葉)、山桜(緑葉)、山茱萸(緑葉)、チャノキ(緑葉)、モチノキ(常緑)、シュロ(常緑)、ソテツ(常緑)。※竹林(孟宗竹・篠竹)

鳥獣:アオサギ、ダイサギ、ヒヨドリ、キジ、ウグイス、ムクドリ、ホトトギス。
    キョン(捕獲)、ハクビシン(捕獲)、タヌキ。

◎異常気象・災害・感染症
▼鹿児島県で線状降水帯発生、大雨災害。
▼中国の湖南省、江西省、広東省で大雨災害。

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□冊子『茂原市古文書目録集(その十二)と代表的史料』(茂原市教育委員会2025年3月30日)
□仏具「桜井(吉川)静ゆかりの人物御位牌」(関係者御子孫から寄贈2025年3月)
□通信『評論№233』(日本経済評論社2025年5月31日)※戦後80年特集
□会報『秩父№226号』(秩父事件研究顕彰協議会2025年5月)※島田清三郎の墓碑
□冊子『思文閣古書資料第285号』(思文閣出版古書部2025年6月)



収蔵資料解説「漢詩と民権運動」

5月は、杜甫の「乾元中(けんげんちゅう)、同谷県(どうこくけん)に寓居(ぐうきょ)して作れる歌(うた)七首(しちしゅ)」の「其(そ)の二」を鑑賞しました。※「同谷県」は現在の甘粛省。

6月は上掲詩の「其の三」(第三歌)を鑑賞しましょう。戦乱(安史の乱)と杜甫の弟達の離散について、次のような詩句が残されています。杜甫48歳の時の作品です。

「有弟有弟在遠方」
 「三人各痩何人強」
【作品番号0366】759年作、七言古詩 ※作品番号は『杜甫全詩訳注』講談社学術文庫参照。

書き下し文
弟(おとうと)有(あ)り弟有り遠方(えんぽう)に在(あ)り
三人(さんにん)各々(おのおの)痩(や)せて何人(なんぴと)か強(すこ)やかならん
(『杜詩第3冊』岩波文庫1966年、『杜詩講義4』平凡社東洋文庫1993年、『杜甫全詩訳注2』講談社学術文庫2016年参照)

現代語訳
弟(おとうと)よ、弟よ、お前(まえ)たちは皆(みな)遠方にいる。
三人ともそれぞれ痩(や)せていて誰が元気でいるだろうか。
(上掲文庫参照)


杜甫は長男で、母親の異なる4人の弟(頴・観・豊・占)がいました。戦乱のために3人の弟は離れ離れでした。末弟の占(せん)は杜甫の家族に同行し、秦州(しんしゅう)から成都(せいと)へ困難な旅をしています。「月夜(げつや)に舎弟(しゃてい)を憶(おも)う」【作品番号0304】も759年の作です。

この詩の第4句は「胡塵(こじん)天(てん)に暗(くら)くして道路(どうろ)長(なが)し」(戦乱によって巻き上げられた土ぼこりが天を暗く覆っていて、道は遠く隔たっている)と表現されています。「胡」は玄宗(げんそう)皇帝に対し叛旗をひるがえした異民族の安禄山(あんろくざん)を指します。




《みんけん館掲示板》

◎8月の行事
8月 1日(金):新梅干し試食
8月 4日(月):理事長通院(整形外科)
8月 6日(水):館長通院(歯科)
8月 8日(金):ズーム研究会
8月15日(金):終戦の日(80周年)
        :「房総みんけん館通信№25」発行 

◎みんけん林園
野菜:青紫蘇・赤紫蘇(収穫)、生姜(収穫)、オクラ(収穫)、ミニトマト(収穫)。

果樹:富有柿(結実)、甘夏(緑葉)、柚子(緑葉)、柘榴(結実)、栗(イガ)、枇杷(緑葉)、金柑(緑葉)、パール柑(緑葉)。

♠樹木:楠(緑葉)、樫(常緑)、榎(緑葉)、橡(緑葉)、楓(緑葉)、檜(常緑)、椿(常緑)、山茶花(常緑)、檜葉(常緑)、岩躑躅(緑葉)、高野槙(緑葉)、南天(常緑)、百日紅(開花)、辛夷(緑葉)、金木犀(緑葉)、榊(常緑)、朴木(緑葉)、柏(緑葉)、山桜(緑葉)、山茱萸(緑葉)、チャノキ(緑葉)、モチノキ(常緑)、シュロ(常緑)、ソテツ(常緑)。※竹林(孟宗竹)

鳥獣:アオサギ、ダイサギ、ヒヨドリ、キジ、ムクドリ、ホトトギス。
    キョン(捕獲)、ハクビシン(捕獲)、タヌキ。

◎異常気象・災害・感染症
▼日本各地で40℃を超える猛暑日。
▼熊本県で線状降水帯、洪水被害。

◎みんけん館寄贈寄託資料・連絡通信コーナー
□仏具「桜井(吉川)静ゆかりの人物御位牌」(関係者御子孫から寄贈2025年3月)
□冊子『要覧』(高知市立自由民権記念館2025年6月)
□会報『秩父№227号』(秩父事件研究顕彰協議会2025年7月)※森田稲藏の墓碑
□通信『全国みんけん連ニュース№13』(全国自由民権研究顕彰連絡協議会2025年8月1日)



戊辰戦争と漢詩集 連続みんけん詩話
1877(明治10)年から1878(明治11)年にかけて非常に多くの漢詩集が出版されました。それらの漢詩集には戊辰戦争(戊辰の内乱)を題材にした七言絶句が多数収載されています。

大久保利通(1830~1878)の「戊辰作」、木戸孝允(1833~1877)の「戊辰作」、前原一誠(1834~1876)の「戊辰作」、小松帯刀(1835~1870)の「戊辰作」、板垣退助(1837~1919)の「戊辰作」等は明治維新の英傑の詩として公刊され続けてきました。


昨年の衆院選と今年の参院選の結果、日本の国政は「新党叢生」と「小党乱立」の時代に入ったようです。8月からは上述の「戊辰作」(七言絶句)を一首ずつ鑑賞し、歴史の「急変」を検証しましょう。

幕末史は攘夷派も、討幕派も、守旧派も四分五裂し、「乱離乱闘」の時代であったように思います。一橋慶喜が最後の将軍になったことは「急変」と言えるでしょう。

大久保利通「戊辰作」 ※1868年6月作(『増補版 大久保利通漢詩集』)
 陛辞千里向関東
 ●○○●●○韻
 獨拜天顔恩賜洪
 ●●○○○●韻
 一死難酬臣職重
 ●●◎○○●◎ 
 鞠躬願致太平功 
 ●○○●●○韻

※記号の○は平声、●は仄声、◎は両用。起句の二字目が平声なので平起。韻は上平一東(東・洪・功)。二四不同、二六対、下三連不可、四字目の弧平不可等の平仄規則は厳守。
※起句の「陛辞」は「陛舞」という異稿。承句の「洪」は「隆」という異稿。転句の「一死」についても「一夜」等の異稿。

訓読
 戊辰(ぼしん)の作(さく)
 陛辞(へいじ)し千里(せんり)関東(かんとう)に向(む)かう
 独(ひと)り天顔(てんがん)を拝(はい)し恩賜(おんし)洪(おおい)なり
 一死(いっし)酬(むく)い難(がた)し臣職(しんしょく)の重(おも)さに
 鞠躬(きっきゅう)願(ねが)わくは太平(たいへい)の功(こう)を致(いた)さん

※起句の「陛辞(へいじ)」という語彙については『復古記』、『明治天皇紀』等に用例が有る。「陛(きざはし)を辞(じ)し」という訓読の例も有る。「陛」は宮殿の階段。初出誌の『近世詩史』玉山堂清風閣1876年、『増補版 大久保利通(甲東)漢詩集』斯文堂2012年等を参照。

現代口語訳
 京都の御所を去って遠く離れた関東へ行くことになった。一人で天子(てんし)に対面すると感謝の思いが非常に大きい。任務が大変重いので命をかけても果たせないだろう。つつしんで願うのは太平の世を築く功績を成し遂げることである。
(館長訳)

日本史籍協会編『大久保利通日記一』(北泉社1997年)の「明治元年五月二十三日」に「小生(しょうせい)、江戸府(えどふ)在勤(ざいきん)仰(おお)せ付(つ)けられ候(そうろう)」と記述されています。翌日の「五月二十四日」には「大愉快(だいゆかい)の次第(しだい)、大慶(たいけい)の至(いたり)也(なり)」と記述されています。

大久保利通には1868年作の七言絶句として「明治元年西郷参謀の従軍して関東に赴くを送る」、「王政維新の年淀川を下る」、「偶成」が有ります。『甲東先生遺墨集』1927年が公刊されており直筆の遺品が収載されています。

(以下続く)